<迷子猫探し/No.33>55日ぶりのてんちゃん(失踪から55日目、無事保護)
保護当日(8/25)の早朝、だんなの目の前でリラックスするてんちゃんの様子がメールで送られてきたのを見て、「今日、私は絶対にてんちゃんを連れて帰る」と心に誓いました。
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地元の人に協力してもらいなから苦労して作った餌付けの場所にてんちゃんが現れてくれて、さらにはだんなの目の前で鳴きながらゴロゴロする様子が写真だけでなく動画でも送られてきて、それを見た私はおもわずじれったくなってしまって
「なんでそのまま捕まえられなかったのっ?!?!?!?!」
と、だんなに食ってかかってしまいました。
でもだんな曰く、
距離は本当に目と鼻の先だけど、まだ100%心を許してくれている訳ではなく、お互いの間には緊張感が残っているから、もしもこちらが手を伸ばしててんちゃんの体を捕まえるようなそぶりを少しでもみせたら、絶対に逃げてしまうと思う。
そして1回失敗してしまったら、もう2度とてんちゃんを捕まえることはできなくなると思う。
だからここは慎重になるべきだし、もし本当に捕まえるにしても、少なくとも2人がかりでやらないと難しいと思う、
とのことでした。
・・・おっしゃること、ごもっとも。
だったら行くしかない。
せっかちな私は、その日2度目のチャンス(日没頃)にあわせて諸々の予定をキャンセルして電車に飛び乗り、現場に向かいました。
残念ながら、その日の天気予報は夕方から雨...。
雨が降ると、当然のことながら猫は動き回らなくなるので、てんちゃんに出会える確率はほぼゼロになってしまいます。8月とはいえ、朝晩のここ数日の冷え込みは激しく、急遽地元で薄手のダウンジャケットを買って着込むほど寒くなっていたので、そうなるとますます会えない可能性も高くなってました。
それでも行かずにはいられませんでした。
日没時間の少し前、てんちゃんが現れた餌付けポイントにいただんなと合流すると、案の定、雨が降ってきてしまいました。
この餌付けの場所にまた現れる保証はないけれど、とりあえず可能性が一番高いからということで、場所をお借りしているお家のガレージの軒先で雨宿りをさせてもらいました。2人でぼーっと座りこんでいると、家主の方がやってきて、
「これよかったら。うちも前ネコ飼ってて、その時の余りだけど、まだ使えると思うから」
と、大きな、猫用の魚の缶詰を1つ差し出してくれました。
ありがたく頂戴して、やっぱり今日はこのまま無理なのかな、、、と思っていたら、完全に日が暮れる前に、雨が奇跡的に上がりました。
でも猫は体が濡れるのを嫌がるので、すぐには出てこないだろうな...と、思っていたらなんと!
雨が上がったのとほぼ同時ぐらいに、てんちゃんが私たちの目の前に姿を現したのです。
距離にして、30mくらい先の茂みから、トコトコと。
まるでてんちゃんも、私たちに会うために雨があがるのをまっていたかのように...!
走ってかけつけたい気持ちをぐっと抑えて、だんなと2人、雨宿りしていたガレージからてんちゃんに向かってぶんぶん手を振りました。
それを見て、足を止めてものすごく大きな声で鳴き始めるてんちゃん。
すると今度はその声を聞きつけて、どこからともなくご近所さんちのネコちゃんが1匹、すっ飛んできました。
この2ヶ月弱の間、てんちゃんを見守ってくれていたのでしょうか。まるで、
「てんちゃん、どうしたの〜??何かあった??」
という感じに心配そうにてんちゃんに駆けよって行き、てんちゃんに近づこうとしたのですが、てんちゃんの目線の先に私たちがいることに気づくと、ぴたっと足をとめ、事態を察知したのか、「あっ、そういうことなら、あなたたちにお任せしますから、てんちゃんをよろしく」という感じに、そのまま踵を返して、来た道を引き返していってくれました。
ネコにまで気を遣わせてしまって、一体何をやってるんだろう、、、と一瞬自分が情けなくなりましたが、いや、ここでちゃんとてんちゃんと向き合わないことにはそのネコちゃんにも申し訳ないぞ、と思い直し、改めて全身の意識をてんちゃんに集中させました。
手にはついさっきいただいた缶詰と、大きな洗濯ネットが数枚。
他にもあれこれご飯グッズを持っていたので、とりあえずだんなと2人、「いまからそっちにゴハンを持っていくからね。食べてくれるかな?」とてんちゃんに話しかけ、少しずつ距離を詰めていきました。
2ヶ月間、本当にごめんね。
でも今、てんちゃんが目の前で無事でいてくれて本当に嬉しいよ。
今日はご飯をたくさん持ってきているから、食べてくれるかな。
コルクも、心配しながらお家で待ってるよ。
いろんなことを話しかながら、いつもゴハンを置かせてもらっている場所まで行って座って缶詰を開けると、ガリガリに痩せたてんちゃんが目の前までやってきてくれました。
久しぶりに、至近距離で見るてんちゃん。
目は相変わらずまん丸で、でもその目で一生懸命何かを訴えかけるようにこちらを見つめて、大きな声で何度もなきました。
その様子をみて泣きそうになるのを、泣くのは無事終わってから!とぐっとこらえて、缶詰の中身を手にすくって、てんちゃんの方に差し出すと、てんちゃんは腰を引き気味に、「何かあったらいつでも逃げられるぞ!!」というオーラを全身から放ちつつも、私の手の上に乗った魚をものすごい勢いでパクつき始めてくれました。
そんなに警戒しなくても、私はただまた、てんちゃんと一緒にお家で暮らしたいと思っているだけなんだよ。
てんちゃんはまだ怒っているかもしれないし、納得してないかもしれないけれど、私はてんちゃんがそばにいてくれるととても楽しいんだよ。だからこれからは私たちの考えを押し付けるだけじゃなくて、てんちゃんの気持ちをゼロから受け止めて、頑張るつもりだよ。
そう何度もつぶやきながら、缶詰から魚をすくっては出し、すくっては出し、を繰り返しました。
と同時に態勢を少しずつ捕獲へ向けて、整え始めました。
55日目で終わるか、永遠にさよならか。
一歩離れたところにいただんなにお願いして、まずは洗濯ネットのチャックを全開にして地面に広げました。
今度はその中に、魚を持った手を突っ込んで、てんちゃんの頭がネットに入るように誘導しました。
でも、微妙に違う動きをする私に、警戒して、距離を置こうとするてんちゃん...。
ならば、、と思い、一番でかい、毛布洗い用のネットを広げ、まずはその上に自分ものり、さらにてんちゃんも乗るようにご飯で誘導して、しばらく様子を見ました。
まだまだよっぽどお腹が空いていたのか、一心不乱に魚を食べるてんちゃん...。
なんとなくネットの上に乗ってくれたので、今度は開けたファスナーの部分を持ち上げて、その中に手を入れて、てんちゃんの体が入るように仕向けました。
でもやっぱり警戒して、ネットを被るのを嫌がるてんちゃん...。
何回かそれを繰り返しているうちに、てんちゃんの体が今までで一番深くネットに入ったように見えた瞬間がありました。
もうこのチャンスを逃すものか...!!!!!
私は一気にファスナーの両端を持って、地面からてんちゃんごとすくい上げるようにして、てんちゃんをネットの中に押し込めようとしました。
魚に夢中だったのに、突然足元をすくわれてすっころび、動転して大暴れするてんちゃん...。
私たちに荒っぽいことをされたのに腹を立て、ネットの間から半身を出してものすごい勢いでもがき、すり抜けていこうとしました。
隣にしゃがんでいただんながとっさに両足で挟んでネットごとてんちゃんを押さえつけ、さらにてんちゃんに覆いかぶさるように両手で抱え込んでうずくまりました。
私も必死に押さえ込みましたが、次の瞬間、手に激痛が走りました。
びっくりするてんちゃんに噛まれてしまったのです。
だんなも同じだったようで、買ったばかりのダウンジャケットの袖から、白い羽がふわ〜っと何枚か舞い上がりました。それでもだんなは
「もういやだ!今度は絶対に離さないぞ!!!」
と叫んでいました。
その間、私は団子状態にもつれた中からなんとか手を引き抜き、ごめんねごめんね、とてんちゃんに謝りながら、わずかにはみ出ていたてんちゃんの体をネットに完全に押し込み、必死にファスナーを締め上げました。
全部締まったよ...!!!
わたくしがそう言った瞬間、てんちゃんも体の力をふっと抜いたそうです。
ネットの中で、低い唸り声をあげつつも、もう2度と暴れることはありませんでした。
長い長い、てんちゃん探しの旅が終わった瞬間でした。
(続く)
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