<迷子猫探し/No.32>ついにてんちゃんが目の前に...(失踪から55日目、保護当日の朝)
保護当日の早朝、日の出直後くらいのてんちゃん。この直前数日は、明らかに私たちが現れるのを待っているそぶりを見せはじめ、私たちの目の前でご飯も食べてくれるようになりました。あんなに逃げ惑っていたのに、ついにここまでになりました。この敷地の持ち主の方も、餌場をつくることを快くOKしてくださり、わたくし達がいない間には、鰹節ご飯とお水をおいてくれたりしました。ありがたかったです。
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てんちゃんがいなくなってからの約2ヶ月、行ける時は夫婦2人で、2人で行けなくても必ず2人のうちのどちらかは、毎日現場に通うようにしてました。
なんせ自宅から車で2時間ちょいの距離なので、通うだけでも大変で、かなりの頻度で地元近くのビジネスホテルにも泊まり込みました(でも観光地というわけでもないので、結局現場から車で30分ほど離れたターミナル駅まで行かねばならず、それはそれで結構大変でした)。
それでも期間中に心が折れて、2人とも完全に行かなかったのは、2、3日くらいだけ、だったでしょうか。
いかねばならない、というよりも、てんちゃんを1人ぼっちにしたままなのが本当に心配で、行かずにはいられなかったというのが正直なところでした。
基本的にはてんちゃんが活発に動く日の出の時間(当時は夏真っ盛りだったので、早い時で3時半くらい〜)に合わせて動き、太陽が昇りきった6時半くらいで、一旦終了。
その後おのおの仕事に行ったり、地元のネットカフェにこもってパソコンを叩いて仕事をしたりして時間をやり過ごし、夕方、日没近くになって、また現場に戻って20時頃までてんちゃんを探す...。
やれる日は、朝と夜、両方。
両方が無理なら、どちらかだけ。
これが当時の私達のルーティーンでした。
この時ほど、自分たちがある程度時間に融通のきく仕事をしていてよかったと思ったことはありませんでした。
最後の最後は、やっぱり自分達でやるしかない
私達があまりに頻繁に現場に姿を表すので、地元の人には後半「あんた達、仕事はどうしてるの??」と心配されるようになりました(笑)。
また毎日いるので、私達のことを雇われた業者の人間だと思っていた人も少なくなかったようで、
「いや、うちの猫を探しているんです。私達が飼い主本人なんです」
っていうと、目を丸くしてびっくりされると同時に、いい意味で呆れかえって大笑いされ、いや〜、だったら手伝うよ!と言ってもらえることも多々ありました(てんちゃんが保護できてから、改めて地元にご挨拶に行った時、「あんたらがもう来なくなると思うと寂しくなる」と言われてジーンとしました)。
・・・実はこれって結構重要で、地元の人も、「どうせペット探偵や業者が探しに来てるんでしょ」と思うと、他人事度がぐっと高くなります。
でも、「違うんです、うちの猫を、自分たちでいま必死に探しているんです!」ということが伝わると、態度が一変して、手伝ってくれるようになる人が少なくありませんでした。
そういうこともあったので、後半は私達も意地になっていたのかもしれません。
毎日の高速代やらガソリン代やらホテル代やら...軽く、近場の海外旅行に2人で行けるくらいのお金も使ってしまいました。
でもそれもこれも、全部覚悟を決めてのことでした。
今年の夏の一大バケーションだ!と自虐的に考えたりもしてました...。
ただ、
これだけやったんだから、絶対結果がでる、
てんちゃんが必ず戻ってくる、
という保証は一切ない。
これが迷子猫探しの辛いところではありますが、それでも私達はもうやらずにはいられない、ある種とりつかれたような状態で、てんちゃんを探していました。
最初の1ヶ月は、ほぼ進展なし。
いなくなってからちょうど1ヶ月後に無事でいる姿は確認できましたが、そこからてんちゃんとの心理戦に突入...。
私たちにとっては、自分たちのダメなところとも向き合わねばならなかった後半の方が圧倒的にしんどかった
ダンナと何時間にも渡って、電話でもめたこともありました。
でも、全然詰まらなかったてんちゃんとの距離が、必死に思いを伝えることで日に日に縮まっていきました。
ただ単に、20日以上毎日顔を出していたから、てんちゃんが慣れただけ、と言われればそうだったかもしれません。
でも、逃げていった角を曲がった先で待ち伏せしてくれるようになった姿や、昨日よりも今日、と、毎日少しずつ近くでたたずんでこちらの話をじーっと聞いてくれるようになった姿は、今思い出してみても、それだけでは説明のつかない、てんちゃんなりに色んなことを考えてくれての行動だったような気がして、改めて猫にも人間と同じような思考と感情はある、ということを実感した後半1ヶ月でした。
そして失踪から55日目の朝、ついにてんちゃんは、現場にいたダンナの前でごろごろリラックするするそぶりをみせてくれたそうで、その様子が自宅にいたわたくしの携帯メールに届いたとき、私は、
「今日、私は絶対にてんちゃんを連れて帰る!!」
とだんなに宣言し、その日の予定を全てキャンセルして、現場に向かったのでありました。
(続く)
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